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6日、シャープが韓国Samsungとの資本提携を発表しました。
いくら財政難とはいえ、提携先サムスンはテレビなどで真っ向から競合する会社です。
技術の流出や経営への干渉を心配された方も多いのではないでしょうか。
シャープは6日、韓国サムスン電子との資本・業務提携を発表した。シャープが実施する第三者割当増資をサムスンが約103億円で引き受ける。サムスンは株式の約3%を握る第5位の大株主となる。シャープは業績悪化で自己資本が低下しており、増資で財務基盤の立て直しを急ぐ。
シャープは調達資金を、主に液晶パネルの高精細化技術の開発に充てる方針だ。モバイル機器向けパネル設備などにも投資する。ただ、サムスンへの技術供与は行わないという。
シャープの発表では技術供与は行わないとなっています。
また、サムスン側の発表でもあくまで「協力関係の強化」が目的とされています。
少なくともさしあたっては、安定的な製品の供給が目的のようです。
一方、サムスン電子は発表の中で、「今回の資本提携はシャープとの協力関係の強化が目的であり、経営には関与しない方針だ」と説明しています。
実は以前からシャープが液晶パネルをサムスンに供給しており
すでに「協力関係」はありました。
では、サムスンのいう「強化」とは何か。
ロイターの解説が非常に腑に落ちます。
液晶の次の主力とされるOLED(有機EL)テレビ。
サムスンはOLEDパネルの量産に技術的な目処がついていませんが
LGは(乱暴に言うと妥協的な技術を採用したこともあり)世界初の発売開始を発表しました。
サムスンはシェアを維持するために大型液晶テレビを必要とし
大型パネルの世界一の生産ラインを持つシャープから安定的な調達を受けつつ
OLEDの技術開発に注力するというもの。
これによって浮き彫りになったのは、サムスンがもはやディスプレー事業において世界で文句なしの先頭ランナーではなくなっているという、同社にとって不快な事実だ。
同じ韓国のライバル企業、LGディスプレーは昨年、液晶ディスプレー(LCD)生産でサムスンを抜いて世界第1位に躍り出た。またLGエレクトロニクスは、次世代の有機発光ダイオード(OLED)テレビの販売でサムソンをしのいでいる。
サムスンとシャープの資本提携は、サムスンにとってOLEDテレビ技術の開発が順調になるまでの間、市場に参戦し続ける上で有益な手段
海外メディアCNETやDIGITIMESも同様のメリットがあると見ています。
記事では、この提携はサムスンの顧客かつ競合でありシャープの顧客であるAppleや
そのAppleの顧客でありサムスンのライバルでもあるFoxconnと
シャープ・サムスンの関係に影響を与えると見られています。
サムスンから距離を置きたがっているように見えるアップルの思惑が絡み
今後、面白くなってきそうです。
さらなる下心の有無は分りませんが
すくなくともシャープ・サムスン双方にメリットのある提携ではあります。
また、現実的に100億円程度ではそれほど強い影響力は持てません。
条件はあるものの、昨年末に合意した米Qualcommの出資額が同額程度で
Qualcommを抜いて国外最大の株主になるとはいえ、全体の3%に過ぎません。
シャープが、米半導体大手クアルコムから最大で約99億円の出資を受け入れることになった。新型パネルを共同開発する業務提携も締結。資本提携で今年3月に合意した台湾・鴻海精密工業からの出資受け入れの具体化協議が長期化するなか、経営再建への一手と位置づける。
当初からあった台湾の鴻海(Foxconn)との話がまとまらないのは
シャープが虎の子であるIGZO技術の提供を拒んでいるからというお話がありますので
シャープ自身が技術提供には消極的であるとも思えます。
むしろ技術流出より心配なのは
この金額はシャープの財政の健全化にはほど遠いということです。
有利子負債は1.2兆円、9月に償還を迎える転換社債は2000億円と言われています。
虎の子といわれている液晶「IGZO」も
シャープは特許を保持しているわけでありません。
特許は文科省下の独立行政法人・科学技術振興機構が保持しており
シャープはIGZOの商標を確保しているものの
他社に先駆けて量産技術を確立したに過ぎません。
この優位はせいぜい1、2年と言われています。
サムスンとの提携で、うまくいけば工場の稼働率は上がるわけですが
果たしてこの巨額の負債は解消できるのでしょうか。
個人的にはもう「公的資金注入」でいいんじゃないかと思います。
エルピーダの失敗は吟味する必要がありますが
JALや銀行に使うよりは技術屋さんに使ってくれる方が余程納得できるのですけれど。