2013/02/25

5ヶ月ぶりの死刑執行



Crime Scene / Alan Cleaver


21日、谷垣法相が新安倍政権下で初の死刑執行を命じました。
政府関係者によると、谷垣禎一法相は21日、死刑囚3人の刑の執行を命じた。死刑は昨年9月以来、約5カ月ぶり。昨年12月に安倍晋三政権が誕生して以来初めてとなる。
谷垣禎一法相は3人の死刑執行を受けて21日、法務省で会見し、「(死刑は)人の命を奪う極めて重大な刑で、その重みを改めて感じた」と述べた。一方、死刑制度については「現時点で見直す必要はない」と改めて明言した。
判決確定から6カ月以内に死刑を執行しなければならないとした刑事訴訟法の規定に言及。「法の精神を無視することはできない」と主張した。
制度存続に対する海外からの批判については「国際的動向より、治安維持、国民の安心安全の確保を考えるべきだ」と述べた。 

各種抗議



Protest Egypt (6) / IanMurphy 
抗議・非難がたくさんあったようです。

人権団体アムネスティさん。
結構長い抗議文ですが、「国際的な流れに反している」
「えん罪の可能性がある」「暴力ダメ」というあたりが彼らの言い分のよう。
えん罪は死刑の問題ではなく司法制度の問題ですので
ポイントがずれていると思います。
声明の最後に被害者・遺族の人権についてようやく触れていますが
代替となる救済・保障はまったく具体的ではないです。
社会運動好きな方々によくある傾向ですが。
アムネスティは、死刑判決を受けた者が犯した罪について、これを過小評価したり、許したりしようとするものではない。しかし、被害者とその遺族の人権の保障は、死刑により加害者の命を奪うことによってではなく、国家が経済的、心理的な支援を通じ、苦しみを緩和するためのシステムを構築すること等によって、成し遂げられるべきであると考える。
日本の社民党。
これまた「国際社会が...」を根拠にしたいらしいです。
同じ日に3人が執行されるのは昨年3月29日以来という異例の事態だ。社民党は死刑制度が人権に反するものとして、その存置に強い疑問を呈してきた立場から、今回の3人の死刑執行に強く抗議する。
死刑の廃止が国際社会の共通の意思となりつつあるなかで、日本政府は度重なる指摘に背を向け、一貫して死刑制度の廃止に向かう世界の流れを無視しつづけている。

廃止が加盟条件であるEU。外交代表の声明。
欧州連合(EU)のアシュトン外交安全保障上級代表は22日、日本政府が前日に執行した3人の死刑について「いかなる場合や状況であっても死刑執行に反対する」との声明を発表した。EUはこれまでも日本の死刑執行に懸念を表明し、廃止への取り組みを求めてきた。

フランス・ドイツは各国政府の代表からも声明をいただいています。
ドイツは国民的議論の呼びかけなので幾分穏健ですが
フランスはなかなかの上から目線。
仏独両政府は21日、日本で3人に対する死刑が執行されたことを受けて声明を出し、今後の死刑執行を一時停止するよう日本政府に要請した。
フランス外務省報道官は、死刑は「犯罪抑止力が確立されたことのない非人道的な刑罰」とし、刑執行は死刑廃止に向かう世界的な流れに逆行するものだと非難。ドイツ政府人権問題代表も、死刑制度についての国民的議論を行うよう日本に呼び掛けた。

「国際的」に見ると、EU加盟を目指すトルコなどの例外をのぞけば
イスラム教国のほとんどは死刑を廃止していません。
仏教やヒンズー教などが多いアジアにも廃止している国は少ないです。
また、プロテスタントの力が強いアメリカでも
全ての州で死刑が廃止されているわけではありません。
「カトリックの力が強いヨーロッパを中心に
死刑廃止の国が多い、増えている」とまでは言えると思いますが
それを「国際的」とか言っちゃうのはいかがなものでしょう。
100歩譲って国際的だったとして、だからどうした?とも思います。
たとえば同じ理由で中国に資本主義を勧めている人間を私は知りません。

また、現状を見る限り宗教的・文化的な影響は否定できないと思います。
トルコなどの一部の例外を挙げて因果関係を否定する向きもありますが
死刑を存置している国は非キリスト教国がほとんどです。
いわゆるG7やG8の主要国で非キリスト教国は日本だけですので
日本が浮いて見えることがあるのは当然とも言えます。

加えて、犯人検挙時の「簡易死刑」の有無も大きなポイントだと思います。
検挙の際に犯人を射殺することは日本ではあまり聞いたことがありませんが
諸外国では普通です。
「そんな統計がない」などと言われるのですが、確かに無いです。
正当な行為として当たり前に認められているので統計がとられていないのです。
裁判を経ねば死刑にしない日本の方が余程「人道的」に思えます。
...個人的には日本より犯罪率の高い国には非難してほしくないですケド。

 海外報道



Antenna! / Giorgio Brida
海外にも報じている報道機関がありましたので
それなりにインパクトのあるニュースだったと言えると思います。

UKのBBC。
ヨーロッパだけに批判論調かと思いきやとても客観的です。
「(死刑は)多数殺人に用いられる」「(検察に)起訴されると99%が有罪になる」
「2011年の調査で80%が死刑を支持している」など日本独自の事情も併記しています。
人権団体の「訪問者も運動もほとんど許されないから
日本の死刑は特に残酷だ」というコメントは少々微妙なのですが
全体としては背景も交えたとてもいい記事だと思います。
Japan is one of the few industrialised nations to retain the death penalty, usually reserved for multiple murders.
Though the majority support the death penalty, rights groups say Japan's death row is particularly harsh, with the condemned allowed few visits and little exercise.
Rights groups also highlight Japan's 99% conviction rate, with most convictions based on confessions, as worrying, correspondents say.
Official figures in Japan as of 2011 put support for capital punishment at over 80%. 

カタールのアルジャジーラ。
イスラム教国のカタールも死刑存置の国ですが
淡々と客観的な報道をしています。
BBCも同じようなことを言っていますが
死刑を廃止していない数少ない先進国であることから
注目しているようです。
日本の死刑は執行を孤独に待たねばならず
執行の数時間前に突然告げられるのが残酷だとする
弁護団体の言葉を載せています。
受刑者の自殺があったから
数時間前に通告するようになったなどの事情まで載せてくれれば
もっとステキだとおもえたかもしれません。
Apart from the US, Japan is the only major industrialised democracy to carry out the death penalty, a practice that has led to repeated protests from European governments and human rights groups.
International advocacy groups say the system is cruel because death row inmates can wait for their executions for many years in solitary confinement, and are only told of their impending death a few hours ahead of execution.

...そして考える



Lost in Thought / Keoni Cabral

今回の死刑囚に小学生の娘さんを殺されたご遺族の言葉です。
小林死刑囚の死刑が執行されました。これで楓が戻ってくるわけではありませんが、少しは無念を晴らしてあげられたかもしれません。小林死刑囚が自ら犯した罪を真摯(しんし)に受け止め、刑に向き合ってくれたと信じたいです。

こういう言葉を聞くと
必要な制度ではないかと思えてきます。
「加害者が死んだところで被害者は蘇らない。」
よく聞きますが、他人事だから言えるのかなと。
一方的な犯罪に限ってですが
遺族が気持ちを区切り、少しでも前向きになれているならば
遺族自身の今後の人生のために必要と言えるのではないかと思います。

少なくとも8割以上の支持を得ている現時点で
日本では廃止する必要は無いと思えます。
6ヶ月以内の執行を規定した刑訴法を無視して
自分勝手な判断をする法相より
淡々と仕事をされる法相の方が
個人的には好印象なのです。


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